SCADAとは？DCSやMESなどとの違いを解説！構成要素や事例も

遠隔地から工場や製造プロセス、設備を監視・制御できるようにするために重要なのがSCADAです。SCADAを導入すればファクトリーオートメーションを目指し、スマートファクトリーを実現することができるでしょう。

本記事ではSCADAとは何かを解説し、DCSやMESなどとの違いや構成要素、事例などを解説します。

SCADAとは、「Supervisory Control and Data Acquisition」の略であり監視制御とデータ収集システムのことです。SCADAシステムは、分散している機器や設備を、中央制御室から一元的に監視・制御・管理するためのシステムです。

主に「スキャダ」と呼ばれることが多いです。

SCADAの役割は主に監視や制御、機器や設備の運用管理等です。具体的にはデータを収集し、制御装置に指示を送ることで、製造プロセスや設備の動作状況を監視・コントロールします。

例えば、製造ラインにおいて、生産速度や温度などのパラメーターを遠隔地からリアルタイムで監視し、必要に応じてパラメーターの変更を行い、プロセスを最適化することが可能です。また、遠隔地から複数の施設を一元的に監視することもできます。

SCADAの他にも、DCSやPLC、MESなど似たような意味を持つ言葉があります。ここではそれらとの違いを解説します。

SCADAは、広範なプロセスや施設を監視し、データを収集・表示するためのシステムです。主にリアルタイムのデータを監視することに特化しており、遠隔地からでもプロセスの状態を確認し、必要な場合に制御することができます。

一方、DCSは、プロセスの制御を中央で統合管理するシステムです。分散制御システムとして、異なる部分でプロセスを制御するためのコントローラが複数存在し、これらが中央のシステムから統合的に監視・制御されます。プロセスの高度な自動化と統合が可能です。

つまり、SCADAは設備全体を、DCSは設備を構成する機器ごとを管理するものである、という違いがあります。

PLC（Programmable Logic Controller）とは、プログラム可能な制御装置であり、現場での制御と自動化を担当します。プロセスの制御と動作に焦点を当て、高度な制御精度を持ち、リアルタイムでの応答が求められる状況で使用されます。

SCADAは広範なプロセスやシステムを監視し、データ収集と表示に焦点を当てています。リアルタイムの情報を収集し、遠隔地からでもプロセスの状態を監視し、必要な場合に制御する能力を持っています。

DCSとPLCのような制御システムとSCADAの違いは、主に構成要素や対象の規模です。DCSやPLCは機器の制御を主な目的としていますが、SCADAは他にもデータの表示や通信、分析などでも活用できます。

MES（Manufacturing Execution System）とは、製造工程管理で主に用いられるシステムのことです。製造工程の透明性を高め、オペレーターを支援するという役割があります。

MESには、主に3つの役割があります。
 

• 生産資源や設備の保守、品質管理
• オペレーターや作業スケジュールの管理
• データ収集やプロセスの管理、トレーサビリティ

このように製造における「ヒト・モノ・カネ」の管理を行うのがMESです。一方で、SCADAはMESが収集したデータをわかりやすく可視化・分析するためのツールです。

国内ではMESから出力された作業指示を印刷し、手作業でPLCにパラメーターを入力するという流れになっていることがあります。このような流れにおいて、MESとPLCの中間に位置し、それぞれを接続・管理するのがSCADAです。
これらは設備・工場の制御を行い、全体監視を実現します。
SCADAを検討される場合は、グローバル、マルチサイトに展開可能な接続性の高い製品をおすすめいたします。
Schneider Electricは産業用ソフトウェアとハードウェアのラインナップが豊富であり、様々な規格に対応する製品を取り揃えております。

SCADAには、主に4つの構成要素・機能があります。
 

• 情報の入力
• HMIとしての情報の監視や制御
• 情報の表示や管理
• 通信

SCADAには、設備から収集したデータを自動的に入力する機能があります。従来の製造業は、人がデータを手作業でパソコンやタブレットに入力していました。現在はIoT機器がパラメーターを検知し、データを自動的にSCADAに送信できるようになっています。

例えば、エネルギー供給施設では、タービンの回転速度や発電効率などのデータが収集され、SCADAを通じてオペレーターやエンジニアに表示されます。また、水処理プラントでは水質のpH値や塩分濃度がセンサーによって計測され、これらのデータがSCADAに入力されて監視されます。

SCADAはHMI(ヒューマンマシーンインターフェイス)として、情報の監視や制御の役割も担っています。HMIの定義はプロセッサー搭載機器とオペレーターをつなぐインターフェイスで、オペレーターのダッシュボードです。HMIはほぼリアルタイムでオペレーション情報を表示します。

SCADAは、センサーやデバイスからリアルタイムでデータを収集し、システムに送信することで、遠隔地から工場の状態やプロセスを監視・制御できます。例えば、工場の生産ラインのスピードや温度、圧力などのパラメーターを監視し、異常が検出された場合には自動的にアラートを発信したり、指令を送ったりすることが可能です。

従来のコンピューターでもデータの監視や制御はできますが、工場全体といった大規模なデータの一元管理や機器の制御には向いていません。

【当社SCADAの監視画面】

データを収集しても、人がわかりやすい形で表示・管理できなければあまり意味がありません。SCADAはデータをグラフやチャートなどのわかりやすい形にして表示することができます。

例えば、発電機の電圧が設定値を超えた場合、グラフ上にそのデータを表示し、同時にアラームが鳴って運用者に異常を知らせることができるでしょう。また、異なるデータを適切な図にして分析しやすくすることも可能です。

SCADAには通信基盤としての役割もあります。SCADA内部の設備同士やSCADAと外部との通信を担当する機能です。現在では一般的に「TCP/IP」という通信方式が採用されています。

ただ、いわゆるミッションクリティカルなシステムでは通信の遅延を許容できないため、次世代通信技術である「5G」を用いることが主流です。今後、製造業では5Gが普及すると予測され、通信のさらなる高速化が期待されています。

国内のSCADA市場は、2022年の時点で約1,０００億円規模と推定されています。国内シェアは、約6０%を大手電機メーカーが占めています。

データソース：
経済産業省「製造業における生産性向上のためのIT活用に関する調査」
SCADA MAGAZINE「SCADAの国内シェアと海外シェアについて」

SCADAの国内市場は、以下のような理由から成長が見込まれています。
 

• インフラの老朽化に伴う更新需要
• スマートシティやスマート工場の普及
• セキュリティ対策の強化

SCADAの国内シェアは、大手電機メーカーのソフトウェアが使われることが多いですが、海外の市場では、欧米や中国のメーカーもシェアを伸ばしています。今後は、国内市場においても、海外メーカーの参入が活発化する可能性があります。

世界のSCADAの市場は規模が大きく、2０22年の時点で約2００億ドル規模と推定されています。そのうち、約4０%をアジア太平洋地域が占めています。中国やインドなどの新興国を中心に、SCADAの導入が進んでいます。

算出方法：シェア（%） = メーカーの販売金額 / 市場全体の販売金額

データソース：
グローバルインフォメーション「SCADA市場：世界の産業動向、シェア、規模、成長、機会、2023-2028年予測」
ZDNET Japan「グローバルル産業用SCADA市場の収益、市場規模、販売量、売上高、価格の分析レポート2022-2028
グローバルインフォメーション「SCADA市場：世界の産業動向、シェア、規模、成長、機会、2023-2028年予測」

SCADAの海外市場は、以下のような理由から成長が見込まれています。
 

• 新興国におけるインフラの整備
• エネルギー産業のデジタル化
• 産業用IoT（IIoT）の普及

SCADAにはさまざまな特長・メリットがあります。ここでは主な特長・メリットを3つ紹介します。
 

• スマートファクトリーを実現させやすくなる
• 開発コストを下げられる
• エッジコンピューティングと相性が良い

スマートファクトリーとはIoTなどの先端技術を活用し、自動化・データ連携によって生産性や効率性を最適化した工場のことです。スマートファクトリーの実現は、工場内のあらゆる設備や機器をネットワークに接続し、データを一元化・連携させることが欠かせません。

SCADAを導入することで、さまざまなセンサーやデバイスを統合的に監視・制御できます。工場内のデータをリアルタイムで収集・分析できるようになるとともに、多様な通信プロトコルを統合し、データの一元化と相互連携を実現できるでしょう。

SCADAは開発や生産のコスト削減に役立ちます。通信や監視、データ可視化など多様な機能があるためです。

例えば、SCADAは異なる機器やプロトコルを簡単に統合し、設定を行うことができます。データを管理しやすくなることから新たなシステムの導入や既存システムの拡張がスムーズに行え、リソースの有効活用に繋がるでしょう。

また、グラフィックの設計も比較的容易で、データの可視化や操作画面の構築が迅速に行えます。効果的にデータ解析や操作ができるようになり、生産プロセスの最適化が進む可能性があるでしょう。結果として無駄な生産コストを削減でき、生産性の向上が期待できます。

スマートファクトリー化を進めると通信にタイムラグが生じることがあります。これはデータ量の急増が原因です。

この課題に対処するのがエッジコンピューティングです。エッジコンピューティングはデータの前処理を現場で行い、必要な情報のみをクラウドに送信することで、通信の遅延を軽減します。

SCADAはすでに現場データの収集と前処理を行う基本機能を備えています。このようにエッジ要素として利用できるのもSCADAのメリットといえるでしょう。

SCADAには注意点もあります。特に把握しておく必要があるのは次の3点です。
 

• コストがかかる
• 通信できない機器がある
• 外部連携が難しい場合もある

SCADAの導入には、多くのリソースやコストが発生します。センサーの設置や制御装置の統合、データベースの構築などが必要であり、専門知識と労力が求められるでしょう。

また、導入後の運用や保守にもコストがかかることがあります。具体的にはSCADAの障害対応やアップデート、システムの障害復旧などです。これらのコストを見越して、適切な予算の確保と計画的なリソースの管理が重要です。

SCADAはすべての機器と円滑に通信できるわけではありません。古い機器の場合、情報収集や制御の範囲が制限される可能性もあります。

互換性のない古い機器の場合、アップグレードや代替の機器を導入することが求められます。互換性の確保が難しい場合は、それらの機器を外部から手動で監視・制御するためのインターフェイスを設けることも一つの対策です。

SCADAは外部と連携が必要な場合、異なるシステム間での互換性や通信プロトコルの違いにより、連携が難しくなる可能性があります。

例えば、生産計画や在庫管理のシステムとSCADAが異なる形式である場合、スムーズに連携できない可能性があるでしょう。事前に外部システムとの連携に関する要件を明確にし、互換性や通信プロトコルの適合性を確認することが重要です。

さらに、データの共有や連携に関わるセキュリティー上の制約も考慮しなければなりません。認証や暗号化の手段を用いて、安全なデータの取り扱い方法を確保する必要があるでしょう。

ここではSCADAを導入することで生産や業務が改善された事例を2つ紹介します。

製造現場では、オペレーターの熟練度で同じ品質の製品が生産できないケースも少なくありません。不良品が出ると売上の増加に繋がらないどころか、廃棄するコストがかかり損失が増えてしまう可能性もあるでしょう。

AVEVA Plant SCADAのProcess Analyst機能を使用すれば、生産に関するデータを視覚的に確認できます。状況に合わせて調整できるため、オペレーターの熟練度に左右されず、製品の品質を均一にすることができます。

製造現場によっては流量計などのコントローラーが複数あることから、接続構成が複雑になるところもあります。コントローラーを社内のインターネット回線に繋げると、安全面のリスクが増加してしまいます。

そこで、PS6000＋AVEVA™ Edgeを導入し、各種コントローラーのデータを集約しました。また、SIM付き4Gルーターを介して、安全な通信網によるリモートメンテナンスを実現しました。

SCADAはスマートファクトリーを目指すうえで重要なシステムです。さらなる生産性や安全性の向上を目指す場合、導入を検討してみましょう。

SCADAのみならずIoTに関して不安やお困りごとがある場合、当社の「IoTソリューション」をご利用ください。専任のスタッフがお困りごとを解決に導きます。