歩留まりとは簡単に言うと、投入量に対して、得られた生産量の割合を示したものです。製造現場をはじめとして、さまざまなビジネスシーンで歩留まりの考え方が使われています。
しかし、「言葉を聞いたことはあるけれど、意味や使い方がわからない」という方も少なくないでしょう。そこで本記事では歩留まりとは何かを紹介し、歩留まり率の計算方法や改善方法、製造現場における歩留まりの改善事例について解説します。
しかし、「言葉を聞いたことはあるけれど、意味や使い方がわからない」という方も少なくないでしょう。そこで本記事では歩留まりとは何かを紹介し、歩留まり率の計算方法や改善方法、製造現場における歩留まりの改善事例について解説します。
目次:
歩留まりとは
歩留まりは、「ぶどまり」と読み、英語では「yield(イールド)」と言います。
歩留まりとは、ある商品を作るときに投入した原材料数に対して、実際に得られた生産数量を表す割合です。製造現場の生産性や効率性を高めるために重要な指標で、現状を把握したり課題を分析したりする際に役立ちます。
歩留まりとは、ある商品を作るときに投入した原材料数に対して、実際に得られた生産数量を表す割合です。製造現場の生産性や効率性を高めるために重要な指標で、現状を把握したり課題を分析したりする際に役立ちます。
歩留まりの意味
「歩留まり」は、生産や製造などのプロセスにおいて、材料や作業の結果として得られる成果物の割合や効率を表す言葉です。具体的には、投入した原材料や工程の数に対して、最終的に完成した製品や正常に終了した作業の数を示します。
歩留まりの語源
歩留まりの「歩」には、「歩合」という意味があります。歩合とは「ある数の、他の数に対する割合」を示したもので、「割・分・厘・毛」やパーセントを使って表記された指標です。製造業においては、「原材料から得られた完成品」が歩合に相当します。
歩留まりの「留まり」は、「たまる」を意味する言葉です。製造業における歩留まりとは、完成品がたまる割合、すなわち原材料から完成品に至る過程の効率の良さを表した数値になります。
歩留まりの「留まり」は、「たまる」を意味する言葉です。製造業における歩留まりとは、完成品がたまる割合、すなわち原材料から完成品に至る過程の効率の良さを表した数値になります。
歩留まりの重要性
歩留まりは、生産や製造において重要な指標です。作業が効率的であることを評価するための尺度であり、製品の品質やコストに直結します。高い歩留まりは、生産プロセスの最適化や不良品の削減につながり、生産性と利益を向上させることができるでしょう。また、リソースの節約や環境への負荷軽減にも寄与します。
歩留まりが前日と比べて極端に低くなったり、月単位で徐々に低下してきたりする場合には、何かしらのトラブルが生じている可能性が高いです。長期的な商品の安定供給、あるいは利益率アップを図るためには、歩留まりを正しく把握して分析と改善を繰り返す必要があります。
歩留まりが前日と比べて極端に低くなったり、月単位で徐々に低下してきたりする場合には、何かしらのトラブルが生じている可能性が高いです。長期的な商品の安定供給、あるいは利益率アップを図るためには、歩留まりを正しく把握して分析と改善を繰り返す必要があります。
歩留まりの使い方
歩留まりの理解を深めるために、具体的な言葉の使い方を紹介します。
使い方 | 意味 |
---|---|
歩留まりが低くて利益がほとんど出ていない。 | 不良品が多くて利益がほとんど出ていない。 |
新しいシステム、新しい装置を導入したら、歩留まり率が15%アップした。 | 新しいシステム、新しい装置を導入したら、原材料に対する不良品の割合が15%ダウンした。 |
5,000円の商品を作るのに材料費が4,000円もかかっているなんて、歩留まりが低い。 | 5,000円の商品を作るのに材料費が4,000円もかかっているなんて、割に合わない。 |
その他にも、企業の採用活動やマーケティング・営業活動、販売業や飲食業界などでも同じような意味で利用されています。
歩留まりの意味と使い方を理解すると、職場や現場でのコミュニケーションもスムーズになるでしょう。
歩留まりの意味と使い方を理解すると、職場や現場でのコミュニケーションもスムーズになるでしょう。
歩留まり率・良品率の計算方法
歩留まり率と似た言葉で「良品率」というものがあります。いずれも製造現場において重要な指標ですが、間違えた認識のまま言葉を使っている人も多いため気をつけましょう。歩留まり率・良品率の違いと計算方法について解説します。
歩留まり率と良品率の違い
製造現場における完成品は次の3つに分られます。
完成品のうち、一度も手直しすることなく良品になったものの割合が「直行率」と呼ばれる指標です。以上を踏まえると、歩留まり率・良品率・直行率の違いは次の通りです。
- 手直しすることなく良品になったもの
- 手直しして良品になったもの
- 手直ししても不良品のままだったもの
完成品のうち、一度も手直しすることなく良品になったものの割合が「直行率」と呼ばれる指標です。以上を踏まえると、歩留まり率・良品率・直行率の違いは次の通りです。
歩留まり率 | 投入した原料数に対する、完成品数の割合 |
---|---|
良品率 | 製造工程において、良品になった割合 |
直行率 | 製造工程において、手直しすることなく良品になった割合 |
それぞれの計算式を紹介します。
歩留まり率の計算式
歩留まり率は、以下の式で計算できます。
例えば、100個の材料を投入し、80個の製品が問題なく完成したとします。この場合の歩留まり率は以下の通りです。
良品数がわからない場合、以下の計算式で歩留まり率を求めることができます。
このように全体の生産数と最終的な良品数・不良品数のいずれかがわかっていれば、歩留まり率を求められます。
歩留まり率(%)=良品数÷生産数×100
例えば、100個の材料を投入し、80個の製品が問題なく完成したとします。この場合の歩留まり率は以下の通りです。
歩留まり率 = (80 / 100) × 100 = 80%
良品数がわからない場合、以下の計算式で歩留まり率を求めることができます。
歩留まり率(%)=(生産数-不良品数)÷生産数×100
このように全体の生産数と最終的な良品数・不良品数のいずれかがわかっていれば、歩留まり率を求められます。
良品率の計算式
良品率の計算式は次の通りです。
歩留まり率は「全体の生産数に対する完成品数の割合」を表すのに対して、良品率は「完成品数に対する良品数の割合」を表します。
歩留まり数が80%の製造工程で200個の完成品ができた場合、良品率が80%であれば最終的な利益につながる完成品は160個です。歩留まり率が80%で200個の完成品ができたので、もともとあった原料は250個と計算できます。
このように歩留まり率と良品率がわかっていると、製造現場の状況を正しく把握できます。
良品率(%)=良品数÷完成品数×100
歩留まり率は「全体の生産数に対する完成品数の割合」を表すのに対して、良品率は「完成品数に対する良品数の割合」を表します。
歩留まり数が80%の製造工程で200個の完成品ができた場合、良品率が80%であれば最終的な利益につながる完成品は160個です。歩留まり率が80%で200個の完成品ができたので、もともとあった原料は250個と計算できます。
このように歩留まり率と良品率がわかっていると、製造現場の状況を正しく把握できます。
歩留まりは高い・低い、どちらが良い?
歩留まりの「とまり」という表現から、「歩合がとまってしまう」といったネガティブなイメージを抱く人も少なくありません。歩留まりが高い・低いとは具体的にどのような状態なのか、どちらが良いのか詳しく解説します。
高いと不良品が少ない
歩留まりの高さは、一般的には良いこととされています。歩留まりが高いということは、製品の不良品率が低く、原材料や資源の無駄が少ないことを示しているからです。
不良品として廃棄する量が少なく、より多くの完成品を出荷できるようになるほど歩留まりは高くなります。製造工程における無駄な廃棄が減る分だけ利益率が高くなるため、歩留まり率は100%に近いほど良いことになります。
不良品として廃棄する量が少なく、より多くの完成品を出荷できるようになるほど歩留まりは高くなります。製造工程における無駄な廃棄が減る分だけ利益率が高くなるため、歩留まり率は100%に近いほど良いことになります。
低いと不良品が多い
歩留まりが低い場合、効率の低下や不良品の増加を意味します。製造プロセスや製品の品質管理に問題がある可能性もあるでしょう。不良品が多くなると、製品の品質や信頼性が低下し、顧客満足度や企業の評判に悪影響を及ぼす場合があります。
実際に得られる完成品が少ないということは、出荷できる数が減り、利益率の低下につながりかねません。歩留まりが高くなるような対策を考える必要があるでしょう。
実際に得られる完成品が少ないということは、出荷できる数が減り、利益率の低下につながりかねません。歩留まりが高くなるような対策を考える必要があるでしょう。
歩留まりの改善方法
歩留まりの改善方法には、次の2つがあります。
問題のある製造工程を特定し、何が原因なのか詳しく調べることが大切です。それぞれの方法について解説します。
- 不良品の発生状況を記録・集計
- 「5M + 1E」の視点で原因を調査
問題のある製造工程を特定し、何が原因なのか詳しく調べることが大切です。それぞれの方法について解説します。
不良品の発生状況を記録・集計
歩留まりが低い場合は、製造工程全体の効率が悪いというよりも、特定のプロセスにおいて大きな改善の余地が残されている場合がほとんどです。各プロセスにおける歩留まりを記録・集計して、他と比べて極端に低くなっている製造工程がないか確認しましょう。
「5M + 1E」の視点で原因を調査
不良品発生の原因を突き止める際に重要なのが「5M+1E」という考え方です。「5M+1E」は不良品発生の原因を分類したもので、次の頭文字を意味します。
不良品の発生が多い製造工程において、上記6つの要素を書き出すと問題点が見えてきます。歩留まりを改善するために大切な考え方なので押さえておきましょう。
- Man:人
- Machine:機械・設備
- Method:方法
- Material:原料と材料
- Measurement:測定・検査
- Environment:環境
不良品の発生が多い製造工程において、上記6つの要素を書き出すと問題点が見えてきます。歩留まりを改善するために大切な考え方なので押さえておきましょう。
改善の流れ
不良品発生の原因を突き止める際に重要なのが「5M+1E」という考え方です。「5M+1E」は不良品発生の原因を分類したもので、次の頭文字を意味します。
適切な流れに沿って改善策を実行することで、効率よく歩留まりを改善できます。
- ルールを制定
- 社内体制や管理体制の強化
- IoTやAIの導入
適切な流れに沿って改善策を実行することで、効率よく歩留まりを改善できます。
改善方法1.ルールを制定
製造工程の改善で最初に行うべきなのが、各プロセスにおけるルールを制定することです。それぞれの作業内容や注意点を整理して、従業員が変わっても歩留まりが低下しないようなルールを作る必要があります。
人の手で行う作業はもちろんのこと、たとえ機械を使って行う作業でも最終的には人が管理している場合がほとんどです。人の手が加わる以上、意図せぬヒューマンエラーが起こる可能性はゼロではありません。それぞれの製造工程に関与する人々の作業の精度を高めるためにも、詳細なルールを制定しましょう。
ルールを制定する際は、「誰が行なっても同じ結果につながる」ように意識して作らなければなりません。従業員の能力によって得られる結果に差が出ないように、なるべく細かく丁寧なルールを制定しましょう。
人の手で行う作業はもちろんのこと、たとえ機械を使って行う作業でも最終的には人が管理している場合がほとんどです。人の手が加わる以上、意図せぬヒューマンエラーが起こる可能性はゼロではありません。それぞれの製造工程に関与する人々の作業の精度を高めるためにも、詳細なルールを制定しましょう。
ルールを制定する際は、「誰が行なっても同じ結果につながる」ように意識して作らなければなりません。従業員の能力によって得られる結果に差が出ないように、なるべく細かく丁寧なルールを制定しましょう。
改善方法2.社内体制や管理体制の強化
制定したルールをきちんと守り、製造現場が一丸となって実行と改善を繰り返していける体制作りも大切です。社内体制や管理体制を強化することで、従業員がルールを遵守するだけでなく、さらなる改善施策のヒントが見つかる可能性もあります。
体制強化の具体例は次の通りです。
どれだけ素晴らしいルールを制定しても、従業員に守らせる工夫をしなければ効果は半減しかねません。社内体制や管理体制を見直して、ヒューマンエラーがゼロになるように努めましょう。
体制強化の具体例は次の通りです。
- 意思疎通をする際は、正確に伝わったかどうか共通のジェスチャーで反応する
- わからないことはすぐに質問できるような雰囲気を作る
- テキストだけでなく、動画や音声も活用して多くの従業員に伝える工夫をする
どれだけ素晴らしいルールを制定しても、従業員に守らせる工夫をしなければ効果は半減しかねません。社内体制や管理体制を見直して、ヒューマンエラーがゼロになるように努めましょう。
改善方法3.IoTやAIの導入
製造工程のなかにIoTやAIを導入するのも1つの方法です。完璧なルールと社内体制が整ったとしても、人が関与する以上は不良品発生のリスクがゼロになることはありません。IoTやAIを導入することで、ヒューマンエラーの防止につながります。
製造現場にIoTやAIを導入すると、次のようなメリットがあります。
IoTやAIを導入すると多くのメリットが期待できますが、場合によってはルールを改変したり従業員に教育したりする必要性も出てきます。より生産性の高い製造現場にするためにも、状況に合わせて柔軟に対応しましょう。
製造現場にIoTやAIを導入すると、次のようなメリットがあります。
- 従業員一人ひとりの能力の差による品質のばらつきを防げる
- 人件費の削減により全体的な利益率アップにつながる
- 蓄積されたデータを分析して新たな改善点を発見できる
IoTやAIを導入すると多くのメリットが期待できますが、場合によってはルールを改変したり従業員に教育したりする必要性も出てきます。より生産性の高い製造現場にするためにも、状況に合わせて柔軟に対応しましょう。
歩留まりの改善を目指すなら
歩留まりを改善させるためには、一つひとつの製造工程に着目して改善を積み重ねていく必要があります。ただし、従来とは異なるルールを制定したり、社内体制を変えたりするのは手間や時間がかかるのも事実です。
効率よく歩留まり改善を目指すなら、製造現場を熟知した会社に相談してみるのもおすすめです。当社では歩留まりの改善だけでなく、IoTプラットフォームとIoT製品をオールインワンでご提案します。
IoTやDXに関する不安やお悩みがある場合、ぜひご相談くださいませ。
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